金融は「業」から「機能」へ——BaaS・エンベデッド・ファイナンス・APIエコノミーの見取り図
BaaS・エンベデッド・ファイナンス・APIエコノミー。同じ現象を指しているのに噛み合わない3つの言葉を定義し、その関係を一枚の地図として整理します。
社内会議や商談で人によって意味が揺れる3つの言葉——BaaS・エンベデッド・ファイナンス・APIエコノミー。この記事では、それぞれを定義した上で、その関係を一枚の地図として整理します。
#001 なぜ銀行は「解体」されはじめたのかでは、銀行が一体で担っていた金融機能が複数のプレイヤーに分解されていく「金融アンバンドリング」という現象を整理しました。この現象を語るとき、必ず登場するのが「BaaS」「エンベデッド・ファイナンス」「APIエコノミー」という3つの言葉です。社内会議や商談の場で、これらの言葉が人によって異なる意味で使われ、議論が噛み合わない場面に遭遇したことがある方も多いのではないでしょうか。
3つの言葉、それぞれ何を指すのか
まず、3つの言葉が指している対象を個別に確認します。
BaaS(Banking as a Service) は、銀行が持つ口座・決済・本人確認といった機能を、API経由で他の事業者に提供する仕組みを指します。これは「金融機能を提供する側」の言葉です。
エンベデッド・ファイナンス は、事業会社が自社のサービスの中に金融機能を組み込んだ状態、またはその結果を指します。これは「金融機能を利用・組み込む側」の言葉です。
APIエコノミー は、さまざまな機能がAPIを通じて連携し、流通する経済圏全体を指す、より広い概念です。金融に限った言葉ではありませんが、金融分野でも同じ仕組みが働いており、BaaSとエンベデッド・ファイナンスをつなぐ「流通の基盤」として機能しています。
3者の関係を一枚で見る
この3つの言葉は、対立する概念ではなく、同じ現象を異なる立場から見たものです。整理すると、次のような関係になります。
金融機関やフィンテック企業が、自社の機能をAPIとして外部に開放する——これが BaaS です。そのAPIが、APIエコノミーという流通の基盤を通じて、事業会社のシステムとつながります。そして、事業会社がそのAPIを自社サービスに組み込んだ結果、利用者から見えるのが エンベデッド・ファイナンス です。
つまり、「提供する仕組み」がBaaS、「つながる基盤」がAPIエコノミー、「組み込まれた結果」がエンベデッド・ファイナンスという、一つの流れの中の異なる地点を指す言葉だと捉えると、関係が整理しやすくなります。
#001の「アンバンドリング」とのつながり
#001で述べた「金融アンバンドリング」、つまり金融機能の分解という現象は、見る立場によって異なる名前で呼ばれています。分解された機能を「提供する側」から見ればBaaS、その機能が「組み込まれた結果」を見ればエンベデッド・ファイナンス、機能が「流通する仕組み」を見ればAPIエコノミーです。3つの言葉は、同じ地殻変動を、異なる角度から照らしたものだと言えます。
海外では、エンベデッド・ファイナンスの市場規模は今後も拡大が見込まれているとされています。この拡大の背景にあるのも、BaaSという提供の仕組みと、APIエコノミーという流通基盤が整ってきたことです。
この地図のどこに自社が位置するか
この地図の上で、読者A(金融機関・フィンテック企業)と読者B(事業会社)は、それぞれ異なる位置に立っています。
読者Aにとっての主な関心は、BaaSの提供側——自社のどの機能を、誰に向けて、どのような形でAPIとして開放するかという設計です。読者Bにとっての主な関心は、エンベデッド・ファイナンスの活用側——自社サービスに、どの金融機能を、どのような形で組み込むかという選択です。そして、両者の間をつなぐAPIエコノミーという基盤の存在が、両者が提携する際の接点になります。
この記事の判断ポイント
- BaaS・エンベデッド・ファイナンス・APIエコノミーは、対立する概念ではなく、同じ現象を「提供」「結果」「基盤」という異なる立場から見た3つの呼び名である
- 自社がBaaS提供側か、エンベデッド・ファイナンス活用側かを意識することで、今後の議論で使う言葉の精度が上がる
- まずは全体の位置関係を掴み、自社の立場に応じて関心のある論点から深掘りしていくのが効率的である
監修: K(実務監修)
FAQ
よくある質問
BaaS・エンベデッド・ファイナンス・APIエコノミーの違いは何ですか?
BaaSは銀行機能をAPIで提供する「仕組み」、APIエコノミーは機能が流通する「基盤」、エンベデッド・ファイナンスは事業会社のサービスに金融機能が組み込まれた「結果」を指します。同じ現象を提供・基盤・結果の立場から見た呼び名です。
自社はどの立場で関わればよいですか?
金融機関・フィンテック企業はBaaSの提供側として「どの機能をどう開放するか」、事業会社はエンベデッド・ファイナンスの活用側として「どの金融機能をどう組み込むか」を検討するのが出発点になります。
これらの言葉は#001のアンバンドリングとどう関係しますか?
金融アンバンドリング(機能の分解)を、提供する側から見ればBaaS、組み込まれた結果を見ればエンベデッド・ファイナンス、流通する仕組みを見ればAPIエコノミーと呼びます。同じ地殻変動を異なる角度から照らしたものです。
Series